いろんな感情を無駄にわきたたせている私であるが、仕事もしているのである。
友だちに誘ってもらって、あるコンペに参加すべく、それに必要な、民族衣装や舞踏衣装を調べまくり中。
「画像検索」で、ずら〜〜っと資料が見られる便利さよ。
こういうの、ホントありがたいパソコン。
図書館にも出かけて行って、参考になりそうな本を数冊かりてきた。
「その国の民族衣装」とひとくちにいっても多種多様。
中で細分されるのだ。
日本は着物であるが、花嫁衣装とか喪服とか浴衣とか...形態は似てるけど、細部は大きく異なるわけで。
そんな事情をまったくしらない外人だったら、浴衣に角隠しのヘアースタイル...とか描いてしまうこともありえるかもだろう...。
調べてみて思ったのは、メインの被写体の脇に写り込む、なーんてことない普通の通行人の素敵なことだ。
例えば.....大正時代の花嫁さん。
家を出るところの写真には、近所の子どもたちやばあさん方が見切れて写り込んでいる。
顔の汚れたガキどもも。
ばあさんの肩のところにツギのあたった縞模様の着物も民族衣装と思う。
よその国では、髪につける花の位置でも決まりごとがあるそうだ。
いつも「着ることは自由発想。自分に似合うように」とかね、思っているけれど、異国の民族衣装についてはそうもいかない。
異国では外人の私。
知らぬとはいえ、いかんせん「浴衣に角隠し的トンチンカン民族衣装」になりそでどうもねえ。
...............
しかし!!民族衣装は本当におもしろい!
そしてとっても合理的に見える。
これを機会にもっと知りたいとおもう。
ぐっと力をこめて、小動物をすくうように持ち上げる。
ぷるぷると小刻みに動くのは、生存のあかしか?それとも私の震えなのか、判断はしかねた。
ん?
拍子抜けするほどの軽さを腕に感ずると同時に、まるまっていた「ヤツ」はするするとカラダの形を変えた。
あんまりな変貌っぷりにおどろき、私はM字開脚でどすんとしりもちをついた。
ヤツはきっぱりとした長方形になったのだ。
裏側は有名ブランドのマークがたっぷりと入ったつやつやなブルーサテン地でできていた。
不安、恐怖、驚愕、唖然、なんだこりゃ、安堵、虚無。
魂がうずまく紫色のけむりとなって、私の口から昇華していった。
両の手で毛皮ショールをささげ持ち、M字開脚で雪の上に座り込む女、打ち捨てられたコート、シュールな光景だ。
不安から虚無に移行していった感情はいっきょにカシャーンカシャンカシャーンと合体して、巨大な怒りに変身していった。
怒りスーツに身を包んだ私は、喉のもてる最低音でつぶやいた。
「っざけんなよ」
手にした小動物、改めショールをおもいっきり投げつけてやるも、ふわ〜〜っと舞い上がるだけのそれは、まことに残念なことだった。
舞い降りたショールはまた雪の上で次なる発見者(えじき)を待つ体勢を早くも整え、今度は長々伸びた伏せの姿を決めた。
じつに、.....見事だ。
座り込んだり投げつけたりと、いきなりアクティブになった私によろこんだのはスーだった。
「え?あそんでくれるの?」とじゃれついてくる。
怒りは瞬間にして歓喜にかわる。
動物たちがもたらす感情のゆさぶり。
ありがとうスー! ってこんなオチ??
スーさんお気に入りのこの道、ショールの製造元にちなんで、これから「セリーヌの小径」とよぶことにしよう。
セリーヌのために抜けてしまった私の魂をとりもどすことを願いつつ.....。
おわり