私のすすめで水中ウォーキングを始めるという姉、どんな水着を買ったらいいかわからん!というので、ここはひとつ、先輩の私が選んであげよじゃないか......と胸ポンで駅前にある大きなスポーツ用品店にいってきた。
先日の自分の水着選びでは水着コーナーばかりに目がいってしまい、お店全体を見まわってはいなかったのだ。
今回は、お水関係以外のコーナーもじっくりと攻めてみた。
トライアスロンとかマラソン、ヨガ関係など運動系の「着るもの」はものすごく進化していたのね!あ〜おどろいた。
とても機能的だしおしゃれだ。
アスリートたちの着ている本格的なスポーツウエアーは、オリンピックなどテレビでかいま見るだけだったものだから、すべてが新鮮に目にうつる。
アンダーウエアーのコーナーではつい興奮してしまった。
「そそ、こゆのほしいかったアタシ、ここあった!これこれ」
と、在日半年の外人コトバで欲求を炸裂させた。
それは、アンダーウエアー(つまりブラですよね)でもあり、トライアスロンでは水に浸かってもいいらしかった。
もちろん、水着の上部分ともなれる。
ピシッと胸とその近所の肉をまとめてめんどうみてくれるのだった。
そそ、こゆうのこそ、薄手のTシャツの下に着たかったのだ、私は。
短めのタンクトップってことである。
ならば透けても平気だ。
襟ぐりが大きく開いたTシャツから肩ひもが見えてもいいのだ。
安心の一着、いいもの見つけた!である。
と......ここで、友人から情報が。
「テニスするとき、こういうブラするよ」
とあっさり。
そうだったのね、スポーツブラってこういうのだったのね。
とんとスポーツをしていなかったものだから、まったく未知の世界の着用物だったんだ。
これから探求のしがいがありそうだ。
娘が子どもを連れて遊びにきて、そして帰るとき、バスに乗るまで見送る。
行くバスに、バイバイと手をふる。
そのたんびにしつこく私は思い出すのだ。
30年も前の出来事なんだけど。
1才になったばかりの娘と私はバスに乗っていた。
下車する停留所がもうすぐ...というタイミングで娘はいきなりワッと泣き出したのだ。
泣く娘をあやしながらバスを降りると、いっしょに小学校の高学年生ぐらいの男子もいっしょに降りた。
彼は、大きな声を出して傘をふりまわしながら、我々を追っかけてきた。
足もひきずっていた。
養護学校の生徒だった。
私は怖くなって、娘を横抱きにしながら足早で逃げた。
でも彼は追いかけてくる。
傘ブンブンと奇声が意味なくこわかった。
傘の先で刺される!と思った。
郵便局があったので逃げ込んだ。
ただならぬアタシの雰囲気に、郵便局の女性局員さんは、
察してくださったようだった。
私の顔は激しくひきつってたと思う。
彼女は続けて飛び込んできた彼の手をとって、
「どうしたの?」
と聞いた。
彼は局員さんに何やら話していた。
うんうんと局員さんは聞いて、それから私に説明してくれた。
「赤ちゃんが泣いていたから、涙をふくようにテッシュを渡したかったらしいのよ」
彼はテッシュで、娘と私の顔をぐいぐいとこすってくれた。
ごめんね。ありがとう。
何回いっても足りんだろう。
...して彼は、礼には及ばぬといった風情でスタスタと去っていった。
後日、郵便局であの局員さんと会ったので、あのときのお礼と詫びをいったら、
「ああいうときは『どうしたの?』って聞けばだいたいわかるのよ」
と私にいった。
彼女の子どもも養護学校に通っているということだった。
わけわかんないような行動にみえても、ちゃんと理由があることだって。
しゃがんで「どうしたの?」と聞けば済むことだった。
30年以上も経つけど、自分のしでかしたでかいミスと、卑しい心を忘れない。
もう彼は、優しいおじさんになってる年頃だよなあ。