私はスーといつもの散歩途中であった。
対面から、なんとも素敵な着物とモンペすがたの女性が歩いて来られる。
黒のベストともコートともいえぬ羽織ものを羽織っている。
あまりのかっこ良さに見とれ、通り過ぎた後も振り返って後ろ姿を目で追った。
後ろエリはブイ字に大きく開いている。
あの羽織ものはいったいどうなっているんだろう?
もう、じろじろ見たくてたまらなくなり、辛抱たまらず駆け寄って......。
「スミマセン!ちょっとお話してもいいですか?」
と、躊躇もなく話しかけていた私であったのだ。
立ち止まってくれた女性は、
「あら、これですか?羽織の袖をとっちゃったものなの。ごらんになります?」
と、こちらはもっと躊躇なくベンチにバッグを置くやいなや、羽織ものをさっと脱ぎ、
「こうなってるのよ」
と広げて見せてくれた。
上から下までもっとよくよく見れば、モンペ風のサルエルパンツにブルーギンガムチェックの絽の着物。
半襟は手ぬぐいみたいな緑の布。
黒足袋は、ところどころ薄くなり、白っぽくなっている。裏生地も黒地で。
もーもーどれをとっても好みなものばっかを着ていらしたのだ。
「パンツはね作ったの。半襟はガーゼ」
いっこいっこ着てるものを説明してくださった。
「そんな風に着こなすなんて、本当に本当に素敵です」
と、コーフンの私は鼻息あらく言った。
「ありがとう。着物は古着屋で500円ウフフ。羽織は母のお下がりよ」
キター♪私のツボに。
今、着物に興味が津々であること、普段にどしどし着たいと思っているがなかなかであることなどをお話したところ、
「昔の人は着物で畑しごともしたし、今よりもっと自由に着こなしていたのよね」
と。
住まいが近所ならいいな〜、もっと話したいな〜と、お家をうかがったら、遠かった...。(伊豆)
たまたま多摩に来ていたということだった。
私は続けて言う。
「お名前とご住所教えていただけませんか」
彼女はあっさりと教えてくれた。
アタシもアタシだけど、彼女もそーとーだと思う。
たった今出逢ったばっかのヘンな女に教えちゃうなんて。
でも....なにか通じ合ったのは確かだと思う。
「失礼ですけど、おいくつですか?」
こんな失敬千万なことも聞いた。
私よりみっつ上だった。
「私は本田といいます。この辺に住んでいます。57歳です」
と聞かれてもないのにトンチンカンの返しをした。
「手紙を書きます!」
とも付け加えた。
「遊びにいらっしゃいよ。電車ですぐよ。いいところたくさんあるの、案内するわ」
そして、
「今度お会いするときは、着物でね!またお会いしたいわ」
と言って、去っていかれた〜〜〜。
これから手紙を書くぞ〜。
こんな出逢いもアリだね。
彼女は綿花栽培もしているという。
興味津々。