【気に入りの一着で感謝を】
お別れに着ていく服
お互いの家族みんなで親しくさせてもらっていた友人のご主人が、まったく突然に亡くなった。
優しくてあたたかで、開放的な家庭を作っていらしたご夫婦。
信じたくない気持ちいっぱいだったけれど、お別れに行かなくてはならない。
宗教のない自由葬ということ、紺色でハイカラーのワンピースを着ていくことに決めた。
一番気に入っている服、ストッキングはボルドー色にした。
いきなり喪主になってしまった友だちは、黒のニットに真珠のネックレス、髪をキリリと結い、白いシャツにコーデュロイスーツ姿のご主人に寄り添っていた。どこでも、いつまでも素敵なカップル。
集まった方たちも、黒地に細かなドット模様のシャツに黒のジャケットとか、プリーツ加工のジョーゼットブラウスに大きな黒のブローチなど、それぞれに見送るための装い。きれいな集まりに見えた。
きちんとした喪服の一そろいは、用意しておかなくてはならないものだけれど、でも・・・喪服でお別れしたくない友人がいる。
突然の訃報にあたふたとしながら、それでも気持ちを込めて選んだ気に入りの服で感謝の心を伝えに行く、そんな一着がいいと思った。
友人ご夫婦とのたくさんの思い出を、これからこの服に袖を通す度に何度も思い出すことだろう。