スーの散歩の途中では、いろいろと拾いものをする。
秋には特にいい拾いものどっさりと。
私は「拾いもの達人」なのである。
今日、意外さ最上級な拾いものをした。
それは道路のわきっちょのタイル塀のあたり.....申し訳ないのだが、スーのお気に入りスポットのあたりに落っこちてた。
入れ歯!
さすが達人ともなると拾いものの押さえどころがちがうでしょう?
わりとすべての歯がピンク色の歯茎に生えそろっているものだったけれど、それ、上の歯か下の歯かは判断がつかなかった。
なにか、こう、妙に近寄りがたい雰囲気をただよわせてそれは道にあった。
ちょっとだけ迷ったけれど、達人としては拾わぬわけにはいかない。
ビニール袋を散歩バッグから取り出し、そっと拾って近くの交番に届けることにした。
交番には若いおまわりさんがいて、手渡したビニール袋を透かして見ながら、
「入れ歯ですね〜」
と確認したのち、まじめな顔でこう続けた。
「拾得物の権利を放棄しますか?」
私は、声のトーンを一段階ほどおとし、
「はい、放棄します」
と、名も所も告げずに粋に立ち去ったのである。
これから、達人より上の位の名人を名乗ろうと思う。