よく乗車するバスの窓から見える、ある気になる建物。
その建物の名前は「糀屋ビル」というのだった。
その昔、いやそう遠くない昔はきっと糀屋を営んでいたんだろうな。
今、その中型のビルには、不動産屋と学習塾と居酒屋が入っている。
駅前に建っているから、そういった顔ぶれになるのはいたしかたなかったのだろう...と推測。
先人(ビルのオーナーかもしれない)の思いを名前にのみ残したビル。
作る人がいなくなっちゃたのか、採算がとれなくなったのか、貸し店舗のあるビルにした方が、儲かるからか。
宿っていた糀菌、いまいずこ....。
どんな味の糀だったんだろう。
「糀屋ビル」はいつも右から左へと動いて、バスの窓から消える。
これも「熟年取材」のひとつだった。
ある展覧会会場のすみっこで、三人の中年女性が、声をひそめながらも、熱心に語っていた。
展示物に目をやりながら....だったら、なんの不思議もないが、興味&話題の中心はあきらかに、展示物とは無関係とおもわれる話しっぷりであった。
通りかかるという体で、ちょっとだけ近づいて、耳をそばだてたところ、韓流スターについて熱く語り合っているところだった。
「ペ•ヨンジュン」いまだに根強い人気なんだ!と驚く。
彼女たちは、それはそれは生き生きとした表情で語り合っていたんである。
水を得た魚たち。
愛するものが共通って、嬉しいものね。
それがオタクの神髄である。
先日の、アタシと友もはたから見れば、きっとそう見えてたに違いないと思う。
ランチメニューのコロッケ定食をもぐもぐ食べながら、「糀」について嬉しそうに語らうふたり、それは友と私。
糀をつかい続けた結果、白髪が減ったようだとか、お肌がきれになったような気がするだとか、まいきょにいとまがない。
糀しょうゆ、酢糀、塩糀、甘酒、味噌の味についても、ただただ絶賛するわれら。
同じ糀をつかって手作りしているからだ。
食べ終わった後は、喫茶店に場所を移し、また同じ糀ばなし。
糀ばなしは尽きません。
私はこの話題が楽しくって、嬉しくってしょうがない。
「あの甘さったらね」
と一言申しただけで、100ほど通じる嬉しさはないです。
友からの、
「ゆるされるなら、甘酒風呂にして入りたい」
という意見に、大きく賛同したものである。
「甘酒屋をやったら、一杯300円で販売するのはどうか?」
という私の提案には、
「う〜ん、それは高すぎると思う」
という。
原価と考え合わせて.....価格設定はもう少し詰めが必要だ。
甘酒と何か他のものとの組み合わせセットにするとか?
甘酒に合う食べ物ってなんだろうなあ。
甘酒の中に白玉を浮かべての、「白玉甘酒」どうだろう。
塩糀に漬けたきゅうりや人参をちょっとお口直しに添えちゃうとか?
空想の甘酒屋は、心の中ではすでに開店準備段階にはいっている。
同じものを深く愛するものは、おしなべてオタクと呼ばれる。
わたしらは、糀オタクとよばれても、もはやなんら差し支えない。
もし、もっと糀オタクがいるのなら、どこかに集まって、情報交換などしてみたいものである。
糀の効き目や、ひみつの購入ルートなどもうかがいたい。
集合場所は、やはり銀座の「コージーコーナー」か。