この日、何を着ていこうか...とは、仕事の依頼のあった日からずっと考えていたことだった。
人前に出るんだもの、きれいにしていきたいの気持ちは、もりもりにあった。
しかしおしゃれのことをお話するイベントのために、何か新しい服を購入するっての、なにかね、どうもね、お手軽すぎる反則なような気分もしていた。
いつも着ている服のありのままの姿で、ありのまんまのお話をするのが筋ってもんじゃないか?おい?
新しい服できれいになるなんてこともなし。
おニューな服に身を包み、特別な話なんかしちゃったひにゃあ、そりゃ詐欺だぞ、おい。
と自問自答していた。
買い物に出かけても選べもしなかったのは、そんな気持ちがせめぎあっていたんだと思う。
気に入った服になんか出逢えもしなかったし、ただただ疲れきってしまっていた。
もちろん、そのとき書いたように気力体力の減少、寄る年波のせいも大きくあったけど。
いつも着ている服でいこう!アクセサリーなどの小物やマニュキアの派手色を効かせていくのがいちばんだ!と思った。
その後、イベントでお話する内容を考えたり絵を描いたりしてるうちに、発表者は白っぽい服がいいじゃないか?
絵のバックになるんだもの、と思った。
切り抜いた小間物の絵を持つ指先にも色があっちゃ混乱して見にくいし...という考えに至った。
白いシャツに白いスカート、真珠のピアスをして名古屋に行こまいか。
マニュキアも落とした。
でも靴だけは、個性の強いもんでもよかろうと思って、シマウマ柄のシューズにした。
(下の方は絵のバックにならないからいいじゃん?)
スカートは、白地にブルーの細い縞の入ったのがある。
真珠のピアスはコットンパールで作ったイヤーカーフがある。
ないのは白シャツだけだ。
そうだ、それを手に入れよう!とココロは決まった。
センス良好な友人につき合ってもらって、買い物にいった。
標的が定まっていると、入るお店も自然と決まってくる。
ほんの二店見ただけで、見つけることができ、こうしてまんまと私は「理想の白麻の長袖シャツ」を手に入れることができた。
嬉しくて嬉しくて、ウキウキッとした。
名古屋行きがうんと楽しみになってきた。
気に入った新しい服って、なんだかんだいってもさ、自信を与えてくれるよね。
「新品」のもつ力ってやっぱりあるもんだと確信した。
あ〜買ってよかった。
アタシ、買ったばっかのシャツ着ていきましたことを告白します。
そして、そのシャツからもらった力でしゃべりまくることができたことも、告ってしまいます。
名古屋の空は気持ちよく高かっただがね。
久しぶりに「ちゃんとした服」を買おうと思った。
多くの人前で話をするという仕事が、もうすぐあるからだ。
ちょっとしたイベント。
普段着はたくさん持っている方だと思うが...クロゼットをじろじろ見てもよそ行きっぽいものはないのだった。
冠婚葬祭用のものは数着あるけれど、そりゃね、違うよな。
ずいぶんと洋服を購入してなかったものだから、今回はスイートポテトにカスタードクリームを添えたぐらいに甘く、
「いいのよ今日は、気に入ったのがあったら値段なんかぜんぜん気にしなくって。
思い切ってパ〜っとお買い物なさいな。いいのよいいの、ホントに今日は」
ってな優しいお母さんのような気分を自分に出してやったのだった。
新宿での用事のついでで、駅ビルのお店とデパートを何店か回ってみた。
お母さんが強く甘く「いいよ」といっているのにもかかわらず、ほしいものがいっこもない。
回ったところが悪かったのか?どーも「若向け」のお店を回ってしまったみたいだったかも。
それでも、シンプル路線やGAPなどのカジュアル路線のお店だったらアタシにも似合うのがあるはず!とふんで見回ったが、洋服に対してはわりと強気の私でも、なかなか購入までの決心はつかなかった。
イタイ人って思われるかも...とか、無理があるんじゃ...などと、いつになく弱気になってしまっていた。
ピンクのセットアップに気に入ったものがあったのだが、試着するのもめんどうなような。
じょじょに選ぶのが、苦痛にさえ思えてきた。
ダメだな、こういう弱気になってる日に買い物しちゃ、と諦めた。
洋服を選ぶのが楽しくないなんて思ったことなど一度もなかったのに。
ふと...ふとだけどね...、年取るってこういうことなのかも、なーんて思った。
気に入った洋服を買うのって、根気とか体力とか勇気なんていうものが、もともと必要だったんだ。
寄る年波ってのが、それらを飲み込んでしまうのかもしれない、なんてね、ふとだけどね、そんなことを思った。
あ〜ダメダメ、そんな弱気なことじゃ!と戒める。
今日は、買い物の気分じゃなかっただけ、また出直そうとなにも買うことなく家に戻った。
なにかイベントのために新しい服を買うというのは、いいきっかけではあるけれど、是非の度合いは少々だ。
新しい服で、おしゃれができるとは限らんしね。
持っているもので、今までとは違った着方や組み合わせ、アイデアをほどこしてこそがアタシのおしゃれ!と何度も思ったではないか!
平常心を保とう、とまで思う。
衝動買いできるほどの衝動に突き動かされない「服」はいらんのだ。
気力と体力と勇気がみなぎったとき、お買い物にいこうと思う。
寄る年波って、けっこう威力あるものだよな。
飲み込まれないよう、うまく波に乗る努力をしくちゃ...と改めて思ったよ。今回は。