「明日から工事に入ります」
と業者の方が挨拶に来られたのは4日ほど前のことだった。
しばらく前から売りに出されていた近所の家だったけれどいよいよ解体され、さら地にするらしい。
あれよあれよという間に家の周りに足場が組まれて、幌のようなシートに囲われた。
屋根がはがされたと思ったら、カマキリをものすごく大きくしたような形の重機が運び込まれていた。
ショベルカーというのか。
「カマキリおばけ」はさすがだ。
のっしのっしバリバリと壁を破壊していく。
正面の壁側から解体していった。
あらわになる家の内部。
シルバニアファミリーのハウス、あるいは舞台上に組み立てられた家のセットようだ。
電気のカサが天井からぶら下がって、レースのカーテンもひかれているが床はない。
そんな状況など滅多に見る機会などないものだから、前を通る人たちは皆のぞき込んでいく。
人んちをのぞくなんて趣味よくねーぞ!と思いながらも目をそらすことができない。
もうもうと湧き上がってくるような砂ぼこりがあたりを包む。
鼻と口を手でしっかとおさえ、目も細める。
白い砂ぼこり越しに見えるオレンジ色のランプシェード。
食卓には、ホットプレートが真ん中にある。
焼肉デーか?
玉ねぎも焼こうと誰かが言う。
庭にはうるさく吠える耳の長い犬が走り回っている。
静かにしてよ〜。
ルルにも焼いた肉を投げてやろうかね。
うさぎのぴょん太は、またいちだんと肥えて丸まって寝ている。カゴの中。
4キロはあるんじゃない?
大量の菜っ葉を洗って、大きな樽に漬け込んでいる母。
お相撲さんのように、真っ白い塩をパッパとまく。
ご自慢の黒檀のテーブルにオイルを熱心に塗り込める父。
「お茶入れてー」
と母を呼ぶ。
庭のコスモス群はわさわさと大きく揺れておる。
解体工事のお兄さんが、上がり続ける砂ぼこりに水をまき始めた。
白い煙幕が消えると、シルバニアファミリーのハウス状態だった家は、すべて畳まれてがれきの山に姿を変えていた。
アタシが一瞬見た大パノラマ。
5年前、私の長野の実家もこんな風に砂ぼこりあげながら畳まれていったのだなと思った。
......................
ブログランキングに参加しています。
明日の更新のエネルギー、ほっぺの上でワンクリックプリーズ!
ニッコリと笑います。(私が密かに)