●「浅草めぐり」あとさき
両方の両親との初顔合わせ【どぜうの会】が決まったのは、ひと月ほど前のことだった。
どきどきしながらも、楽しみにその日を待っていた。
そんなある日のこと....彼の母上からお電話をいただく。
よろしくおねがいします。こちらこそ。どーぞ。いい日になるといいですね。ふつつかな...。いえいえ。こちらこそ。楽しみにしております。ほんとに。こちらこそ。お天気良いと....。
とお話をする。
母上は「それで..」ときりだされた。
当日「サプライズ」を用意したいと。
ビックリさせる相手は、両方の父親と娘。
内通者は、両方の母親と彼。
用意したいサプライズとは.....、
「浅草のあと写真館へ行って記念写真を撮りましょう、そのとき娘さんにウエディングドレス姿をさせてあげたい」
というものだった。
入籍は済ませたものの結婚式は未定な彼ら(特に娘)をきづかってくださった優しい言葉であった。
気持ちが本当にジンジンと伝わってきた。
そして写真館や貸衣装の手配をたのまれたアタシ。
「はい、わかりました。探してみます」
サプライズを請け負った。
ジンジンと感じながらも、私の心の中には若干のハテナの芽が発芽しかかっていた。
彼らは未定だけれど式の心づもりはあるといっていたが?
ウエディングドレスって、自分の気に入ったのを着たいのでは?
主にこのふたつ。
他にもみっつよっつ。
娘はきっと予期せぬ写真撮影と用意されたウエディングドレスにおどろくであろう。
しかしそのおどろきは、企画者らのそれと一致をみないのではあるまいか。
う〜ん....辞退しようか.....しかしうまくことわる自信などまったくない。口べただし。(ホントだって!マジに)
優しい心から発せられた言葉。
それをいったん受け止めた私。
うじうじとなやみになやんだワシは、折衷案を提案した。
•両家みんなでの記念撮影を写真館でする。
•娘にはブーケと輪っかの花かんむりみたいな飾りを用意する。(ドレス着替えナシ)
•写真館で娘が「え〜!?」な顔をしたらやめる。
てな案をお手紙にしたため、髪飾りとブーケを作った私であった。
ba-san作りできたえた腕でわりと上手にできあがって、そこんとこだけは満足だった。
そして当日、浅草めぐりのあと、「伊勢丹でちょっと買い物したいから...ちょっと寄り道して」とかなんとかいって御一行を伊勢丹写真館へ連れ込むことに成功した母らであったことだった。
そして企画のバラし、初めて知らされた面々は「サプライズ〜!」というよりむしろ「怪訝」であったことはいうまでもない。
娘、案の定.....用意された小物を見て、一瞬ぎょっ!な顔。
「じゃあさ、手に花だけでいいよ」
と私。
そこに家人、
「え?かわいいじゃない。すればいいのに」
「そうかな、じゃ付けるよ」
娘は、輪っかの花かんむりをお父さんに付けてもらい、婿は胸に一輪の花を付けてもらう。
7人で写真におさまりました。
カメラマンのおもしろおかしい話術にまんまとひっかかりもし満面の笑顔で。
写真のできあがり、みんな楽しみにしていると口々に。
その後夕ご飯もみんなで食べて帰宅の21時半。
この一件、いちばん大人で冷静な対応と判断を即座に下せたのは娘だけだったのだ。
お見事であった。